川越でのクラウドファンディングの成功事例「つえぽんの着ぐるみ」
はじめに
埼玉県立特別支援学校塙保己一学園PTA(以下、塙保己一学園PTAと称す)では、2014年にクラウドファンディングReadyforを利用して、点字ブロック理解啓発のためのキャンペーンマスコット「つえぽん」の着ぐるみの製作にかかる資金を調達しました。
「くらびとファンディング」は川越に関わる事業において、クラウドファンディングで資金調達する際にそれを支援する仕組みです。今回は、まず、クラウドファンディングがどういったものかを知ってもらうため、川越での成功事例として取り上げ、塙保己一学園の加藤木貢児様にお話を伺ってきました。
つえぽんの製作費をクラウドファンディングで
— 加藤木(かとうぎ)様、本日はお忙しいところありがとうございます。まずは、読者の方に簡単に自己紹介をお願いします。
川越市笠幡にある、埼玉県唯一の盲学校、埼玉県立特別支援学校塙保己一学園で教員をしております。現在、幼稚部、小学部、中学部、高等部普通科、高等部専攻科(理療科・保健理療科)、寄宿舎を設置しており、小さい子から成人の方まで幅広い層が通う学校です。
塙保己一学園PTAでは「点字ブロック理解啓発キャンペーン」を効果的に進めるために2014年にマスコットキャラクター「つえぽん」を考案しました。
—つえぽんのアイデアはどのようにうまれたのですか?
2010年から川越駅や大宮駅で『点字ブロック理解啓発キャンペーン』をおこなっています。そのような活動を全国の盲学校の中で初めてスタートしたのは塙保己一学園PTAでした。当時はコバトン等のゆるキャラを借りてキャンペーン活動をしていたのですが、私たち独自のキャラクターがほしいと思ったのがきかっけでした。そしてPTAにキャラクターの原案を募集し、誕生しました。私たちだけのキャラクターとするのではなく全国に『点字ブロック理解啓発キャンペーン』のイメージキャラクターとして定着してほしいと思っており現在いろいろな都道府県の盲学校に貸し出しをしています。
—「つえぽん」の着ぐるみを製作する資金をクラウドファンディングReadyforを利用して調達しましたが、クラウドファンディングを利用しようとしたきっかけは?
震災をきかっけに東北の復興支援のボランティアに行く機会があり数カ月間は東北に住んでいました。その復興支援を通してたくさんの方と出会いクラウドファンディングを知りました。
その一年後に勤めた塙保己一学園の荒井宏昌前校長が職員会議の際に、『PTAでは手作りの着ぐるみ(つえぽん)で活動をしているが肉体的な負担も大きいと聞いているので、きちんとし た着ぐるみをクラウドファンディングを利用して作りたい。』と提案しました。とても面白いと思い、復興支援の際に実際にクラウドファンディングを利用している人との結びつきや知識もあるのでお手伝いしますと言ったのがきっかけです。
—2014年10月に目標金額60万でクラウドファンディングを始めてから、僅か15日で69人の支援を得て目標を上回る79.5万の資金を調達ができましたが、そのために準備したことや周知活動はどのようなものだったのでしょうか?
とても多くのことに取り組みました。東北の復興支援を行っていた際に出会ったクラウドファンディングに応募した人に話を聞き、どのような計画立てていたのか参考にしました。Readyforの会社で行われていた『クラウドファンディングを始めたい人向けのセミナー』などに参加しましたし、募集開始3ヶ月前にSNSの運用を始めました。現在も、Facebook、Twitterで情報発信を行っています。(https://www.facebook.com/tsuepon/)つえぽんの目的は、『点字ブロックの周りに物を置かないで』ということだけでなく視覚障害者がもっと生きやすい社会になってほしいというメッセージを込めています。SNSではそういったもっと視覚障害者が生きやすい社会になるための情報発信を行ってきました。
—主にどんな方が支援されたのでしょうか?
盲学校の関係者・保護者・PTA・教員が3割くらいでした。ほかはSNSで活動を知った人だと思います。
クラウドファンディングで資金を調達して製作された「つえぽん」は、現在、各地のキャンペーンに登場し活躍しています。
くらびとファンディングについて
クラウドファンディングを達成する上で、重要なのはプロジェクトの内容を周知し、共感していただくことで出資者に支援を募ることだと思います。
— このような市の取り組みについてはいかがでしょうか?
ありがたいことだと思います。さらに多くの方に自分たちのファンディングの内容を知ってもらうことができますし、手数料を負担していただけるのも助かります。
— 今後、何かクラウドファンディングで資金調達を計画しているようなことはあるでしょうか?
つえぽんの数をふやしたいという話もあります。ただ私たちの目的は点字ブロックを代表として視覚障害者が社会の中で生きやすい仕組みを作るということになります。そのためどうすれば良いかということを常に考えています。
— その際に「くらびとファンディング」を利用するとしたら、どのようなことに期待されるでしょうか?
クラウドファンディングを利用する人たちにとって何よりもクラウドファンディングを行うときにどんな文章を書けば人を引き付けるのか知りたいと思います。このような事前準備の内容やどのようにしたら成功に近づくのかを手助けいただければと思います。
— 最後に「点字ブロック理解啓発」活動を始め、この場で伝えたいことや告知などありましたらお願いします。
今は荒井前校長に代わり、佐野貴仁現校長に意志が引き継がれて活動しています。みなさんに川越にはたくさんの視覚障害者が生活しているという事を知ってほしいと思います。そして点字ブロックの上に物を置かないということだけでなくその先にいる視覚障害者のことを考え、もし困っている人がいたら自然と声をかけることができる世の中になっていけばよいと思います。
佐野校長からもメッセージをいただきました。
『まずは、川越が日本一、視覚障害者に優しい街となり、それが埼玉に、日本全体に広がっていけば素敵です。』
—本日はお忙しい中、ありがとうございました。
基本情報
塙保己一学園について
塙保己一学園は、明治41(1908)年に、川越市養珠院内に養寿院の石井愚鑑住職を中心に私立埼玉和協会訓盲学校を養寿院境内に開校。現在は、川越市笠幡に幼稚部、小学部、中学部、高等部普通科、高等部専攻科(理療科・保健理療科)、寄宿舎を設置。視覚に障害のある子ども達のために専門的な教育を行う109年の歴史と伝統を持つ埼玉県内で最も古い特別支援学校です。
点字ブロック理解啓発キャンペーン
点字ブロックは視覚障害者に取って街中を歩くための重要なガイドです。
けれども、健常者はその意味を理解していないために、自転車や荷物を置いて塞いでしまうと、視覚障害者はつまずいて怪我をする、避けることで方向を見失う、時には事故の原因となることさえあります。
点字ブロックの重要性を理解し、点字ブロックの上に物を置かないように呼びかける啓蒙活動が『点字ブロック理解啓発キャンペーン』で、PTA のお母さん方を中心に活動を行っています。
つえぽんについて
それをより効果的に進めるよう2014年に白杖をモチーフとしたキャラクターマスコットが「つえぽん」が考案されました。また、各地でゆるキャラが活躍し、社会に訴えかける力も大きいことから PTAでは手作りで「つえぽん」の着ぐるみを製作しました。しかし、着ぐるみを着る人の肉体的な負担が大きく、きちんとした着ぐるみを製作する必要があると考え、資金調達のための手段としてクラウドファンディングを利用することにしました。