クラウドファンディングで広がる地域の未来(第一部)

クラウドファンディングで広がる地域の未来(第一部)

2018年11月11日(日)ウェスタ川越で開催された「かわごえ産業フェスタ」の会場において、「ミュージックセキュリティーズ株式会社」の代表取締役 小松真実氏を講師に迎えてクラウドファンディングセミナーが開催されました。

第一部は「新たなマーケティング手法としてのクラウドファンディング〜なぜ、クラウドファンディングは地域ビジネスに向いているのか〜」をテーマにした講演、第二部はパネリストを迎えたトークセッションという構成でした。

このセミナー内容を2回に分けてお伝えします。

なお、記事は当日の講演内容を抜粋してまとめてあり、文責は当サイトにあります。

共感の源泉はインパクトにあり

ミュージックセキュリティーズでは、クラウドファンディングはマーケティングと捉え、その成功にはインパクトを源泉とする共感が大切と考えてます。

これが本日の講演で伝える趣旨です。

創業のきっかけは音楽

小林氏は小学校時代からドラムをメインに音楽活動をやっていて、将来は音楽家を目指していました。

しかし、1990年代というのはビジネスで音楽活動をしようとすればメジャー・レーベルと契約するしかなく、レーベルの意向が自分の音楽活動に強く影響を与える。あるいは、オーディションの審査員結果で自分の人生を決められてしまう時代。そこに委ねてしまっていいのかと疑問を感じていました。

投資信託のアルバイトで上場したての中小企業向けのマーケティングに関わる中で、これを音楽家に当てはめて、「音楽家が資金調達できる証券会社を作りたい」と考えて創業しました。

この音楽ファンドを皮切りに、酒造りに音楽家と同じこだわりを見出した「純米酒ファンド」、東日本大震災で被災した会社に対して、単なる寄付ではなく投資も兼ねた「セキュリテ被災地応援ファンド」を立ち上げています。

届けたいのは「資本性の資金」

資金調達には、

  1. 金融機関からの「融資」
  2. 上場を前提としたベンチャーキャピタルからの「融資」
  3. 個人からの「資本性の資金」の3つがあります。

しかし、これにあてはまらない人(会社・事業)も数多くあり、そこに求められている資金は、

  • 元本返済を保証しなくて良い。
  • 経営者の個人保証が不要。
  • 事業の成果に連動して返済や分配ができる。
  • 株式を取得する投資ではない(株主の意向に左右されず経営者の自主性が保たれる)
  • (条件を満たせば)金融機関が融資の際にバランスシート上の資本とみなせる。

といった条件を満たす「資本性の資金」です。

これがミュージックセキュリティーズが届けたいと考える資金で、同社はこの資金調達にクラウドファンディングの仕組みを活用しているのです。

セキュリテはインパクト投資

投資とは、将来の事業計画を作る、それを信じて資金を託すもの。

投資された資金を元に設備や原材料の購入を行う(インプット)、事業を行う(アクティビティ)、サービスや物を販売して売り上げと利益を上げる(アウトプット)、利益の分配や商品を進呈する(リターン)という経済活動が行わる。ここまでが従来の投資と言われるものです。

ミュージックセキュリティーズのファンドである「セキュリテ」が目指すのはその先で、投資によって地域が抱える課題を解決し社会的価値を生み出すインパクト投資です。

インパクトをSDGsの観点で目指す

資金を調達して事業を行って利益を得るのが経済活動ですが、さらに、地域が抱える課題を事業で解決して社会的な価値を見出すことをインパクトといいます。

地域が抱える課題には様々なものがありますが、国際サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals持続可能な開発目標)に掲げられた17のグローバル目標の中でどれを対象にし、どれくらいの量を解決できるかを明確にできるかでインパクトを評価します。

このSDGsに沿ったインパクトが大きいほど、多くの共感を集めることができると考えられます。

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の詳細については、

https://imacocollabo.or.jp/

インパクト投資の例:丸山珈琲

丸山珈琲が行なった社会的な価値の高いインパクト投資の例です。

同社はスペシャリティと呼ばれる珈琲豆を世界各地から仕入れて販売・卸売・喫茶店営業を行なっており、高品質小ロットの珈琲豆を生産するラテンアメリカの農家から前払いで買い付けをするためファンドを募りました。

珈琲豆は収穫してから現金化するまで4〜6ヶ月かかります。しかし、豆を摘むには人手が必要なので、その日当を払うために農家は銀行から高い金利でお金を借りざるを得ません。貧しいものが貧しいままです。

そこで、丸山珈琲は農家の暮らしを安定させるために前払いをしているのですが、珈琲豆を購入してから販売するまでには1年以上あって今度は同社のキャッシュフローが問題になるためファンドを活用しました。

  • インプット  :購入するための資金として5,100万を753名から集める。
  • アクティビティ:珈琲豆を前払いで購入
  • アウトプット :豆の売り上げは8,600万、投資家は4.3%の配当が得た。

ここで生じたインパクト(地域の価値)は次の2つです。

  • 短期的 ▶︎地域の雇用確保、高利貸しからお金を借りなくてもよくなった。
  • 長期的 ▶︎子ども達が学校に行けるようになる(教育水準が上がる)、より美味しい豆ができる、生活水準が上がって税収が上がるといったことが期待できる。

このようにインパクトをきちんと投資家に示せれば多くの共感が集まり資金を集められるのです。

https://www.securite.jp/fund/detail/1641

この後、金融機関との連携や事業の価値を高めるためにデザインの指南やブランディング、投資家の方々と事業者の交流の場の提供をしていることが話されました。

例えば、「被災地応援ファンド」では、東日本大震災の被災地に投資家の方を連れて行くツアーを組み、投資した先の変化やお金がどう役立っているかを知ってもらう。ワイナリーの投資では葡萄を摘みに行くといったことで、投資先との新しい関係が生み出しています。

まとめ

クラウドファンディングというのはあくまでも手段でしかなく、それをどうやって使って行くのか、どうやって投資家を巻き込んで行くのかが重要で、これまで話してきたこと(インパクトがなければ共感は得られない)抜きには、成功に結びつかない。として話を結びました。

基本情報

小林真実氏

早稲田大学大学院修了。2000年12月ミュージックセキュリティーズ合資会社設立、2002年5月株式会社化し代表取締役就任。現在18期目。2011年10月日経ビジネス「次代を創る100人に選出」。2013年ダボス会議で知られる世界経済フォーラムよりYoung Global Leadersに選出。2014年第二種金融商品取引業協会理事就任。音楽のファンドから始め、純米酒や震災復興など、全国538社のための809本、総額約80億円のファンドを作り、温度を感じる、顔の見える新しいお金の流れを作ることに奔走している。

ミュージックセキュリティーズ株式会社

【住所】 東京都千代田区大手町1-6-1大手町ビル3階

【設立】 2001年11月26日(創業2000年12月)

【資本金】1億円

【事業概要】

[証券化事業]インパクト投資プラットフォーム「セキュリテ」の運営業務、ファンド組成業務、ファンド販売業務

[音楽事業]レコードレーベル業務、著作権管理業務、アーティストマネジメント業務

【HP】https://www.musicsecurities.com/

インパクト投資「セキュリテ」

2018年11月11日(日)ウェスタ川越で開催された「かわごえ産業フェスタ」の会場において、「ミュージックセキュリティーズ株式会社」の代表取締役 小松真実氏を講師に迎えてクラウドファンディングセミナーが開催されました。

第一部は「新たなマーケティング手法としてのクラウドファンディング〜なぜ、クラウドファンディングは地域ビジネスに向いているのか〜」をテーマにした講演、第二部はパネリストを迎えたトークセッションという構成でした。

このセミナー内容を2回に分けてお伝えします。

なお、記事は当日の講演内容を抜粋してまとめてあり、文責は当サイトにあります。

共感の源泉はインパクトにあり

ミュージックセキュリティーズでは、クラウドファンディングはマーケティングと捉え、その成功にはインパクトを源泉とする共感が大切と考えてます。

これが本日の講演で伝える趣旨です。

創業のきっかけは音楽

小林氏は小学校時代からドラムをメインに音楽活動をやっていて、将来は音楽家を目指していました。

しかし、1990年代というのはビジネスで音楽活動をしようとすればメジャー・レーベルと契約するしかなく、レーベルの意向が自分の音楽活動に強く影響を与える。あるいは、オーディションの審査員結果で自分の人生を決められてしまう時代。そこに委ねてしまっていいのかと疑問を感じていました。

投資信託のアルバイトで上場したての中小企業向けのマーケティングに関わる中で、これを音楽家に当てはめて、「音楽家が資金調達できる証券会社を作りたい」と考えて創業しました。

この音楽ファンドを皮切りに、酒造りに音楽家と同じこだわりを見出した「純米酒ファンド」、東日本大震災で被災した会社に対して、単なる寄付ではなく投資も兼ねた「セキュリテ被災地応援ファンド」を立ち上げています。

届けたいのは「資本性の資金」

資金調達には、

  1. 金融機関からの「融資」
  2. 上場を前提としたベンチャーキャピタルからの「融資」
  3. 個人からの「資本性の資金」の3つがあります。

しかし、これにあてはまらない人(会社・事業)も数多くあり、そこに求められている資金は、

  • 元本返済を保証しなくて良い。
  • 経営者の個人保証が不要。
  • 事業の成果に連動して返済や分配ができる。
  • 株式を取得する投資ではない(株主の意向に左右されず経営者の自主性が保たれる)
  • (条件を満たせば)金融機関が融資の際にバランスシート上の資本とみなせる。

といった条件を満たす「資本性の資金」です。

これがミュージックセキュリティーズが届けたいと考える資金で、同社はこの資金調達にクラウドファンディングの仕組みを活用しているのです。

セキュリテはインパクト投資

投資とは、将来の事業計画を作る、それを信じて資金を託すもの。

投資された資金を元に設備や原材料の購入を行う(インプット)、事業を行う(アクティビティ)、サービスや物を販売して売り上げと利益を上げる(アウトプット)、利益の分配や商品を進呈する(リターン)という経済活動が行わる。ここまでが従来の投資と言われるものです。

ミュージックセキュリティーズのファンドである「セキュリテ」が目指すのはその先で、投資によって地域が抱える課題を解決し社会的価値を生み出すインパクト投資です。

インパクトをSDGsの観点で目指す

資金を調達して事業を行って利益を得るのが経済活動ですが、さらに、地域が抱える課題を事業で解決して社会的な価値を見出すことをインパクトといいます。

地域が抱える課題には様々なものがありますが、国際サミットで採択されたSDGs(Sustainable Development Goals持続可能な開発目標)に掲げられた17のグローバル目標の中でどれを対象にし、どれくらいの量を解決できるかを明確にできるかでインパクトを評価します。

このSDGsに沿ったインパクトが大きいほど、多くの共感を集めることができると考えられます。

SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)の詳細については、

https://imacocollabo.or.jp/

インパクト投資の例:丸山珈琲

丸山珈琲が行なった社会的な価値の高いインパクト投資の例です。

同社はスペシャリティと呼ばれる珈琲豆を世界各地から仕入れて販売・卸売・喫茶店営業を行なっており、高品質小ロットの珈琲豆を生産するラテンアメリカの農家から前払いで買い付けをするためファンドを募りました。

珈琲豆は収穫してから現金化するまで4〜6ヶ月かかります。しかし、豆を摘むには人手が必要なので、その日当を払うために農家は銀行から高い金利でお金を借りざるを得ません。貧しいものが貧しいままです。

そこで、丸山珈琲は農家の暮らしを安定させるために前払いをしているのですが、珈琲豆を購入してから販売するまでには1年以上あって今度は同社のキャッシュフローが問題になるためファンドを活用しました。

  • インプット  :購入するための資金として5,100万を753名から集める。
  • アクティビティ:珈琲豆を前払いで購入
  • アウトプット :豆の売り上げは8,600万、投資家は4.3%の配当が得た。

ここで生じたインパクト(地域の価値)は次の2つです。

  • 短期的 ▶︎地域の雇用確保、高利貸しからお金を借りなくてもよくなった。
  • 長期的 ▶︎子ども達が学校に行けるようになる(教育水準が上がる)、より美味しい豆ができる、生活水準が上がって税収が上がるといったことが期待できる。

このようにインパクトをきちんと投資家に示せれば多くの共感が集まり資金を集められるのです。

https://www.securite.jp/fund/detail/1641

この後、金融機関との連携や事業の価値を高めるためにデザインの指南やブランディング、投資家の方々と事業者の交流の場の提供をしていることが話されました。

例えば、「被災地応援ファンド」では、東日本大震災の被災地に投資家の方を連れて行くツアーを組み、投資した先の変化やお金がどう役立っているかを知ってもらう。ワイナリーの投資では葡萄を摘みに行くといったことで、投資先との新しい関係が生み出しています。

まとめ

クラウドファンディングというのはあくまでも手段でしかなく、それをどうやって使って行くのか、どうやって投資家を巻き込んで行くのかが重要で、これまで話してきたこと(インパクトがなければ共感は得られない)抜きには、成功に結びつかない。として話を結びました。

基本情報

小林真実氏

早稲田大学大学院修了。2000年12月ミュージックセキュリティーズ合資会社設立、2002年5月株式会社化し代表取締役就任。現在18期目。2011年10月日経ビジネス「次代を創る100人に選出」。2013年ダボス会議で知られる世界経済フォーラムよりYoung Global Leadersに選出。2014年第二種金融商品取引業協会理事就任。音楽のファンドから始め、純米酒や震災復興など、全国538社のための809本、総額約80億円のファンドを作り、温度を感じる、顔の見える新しいお金の流れを作ることに奔走している。

ミュージックセキュリティーズ株式会社

【住所】 東京都千代田区大手町1-6-1大手町ビル3階

【設立】 2001年11月26日(創業2000年12月)

【資本金】1億円

【事業概要】

[証券化事業]インパクト投資プラットフォーム「セキュリテ」の運営業務、ファンド組成業務、ファンド販売業務

[音楽事業]レコードレーベル業務、著作権管理業務、アーティストマネジメント業務

【HP】https://www.musicsecurities.com/

インパクト投資「セキュリテ」